節税

医師 小規模企業共済への加入で節税 大学院生の場合

小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者を対象とした退職金制度です。

iDeCoと類似した制度で、掛け金を毎月拠出するとその分が控除になり、受取時にかかってくる税金も退職所得控除が利用できます。節税効果が大きい制度です

今回は医師(大学院生)である自分が、小規模企業共済を利用して節税を行うための方法について解説します。

小規模企業共済へ加入して節税 医師の場合

小規模企業共済制度とは

制度の仕組み

個人事業主や中小企業の経営者は会社員と異なり、退職金がありません。

それを補うために作られたのがこの小規模企業共済制度です。

独立行政法人である中小機構というところが運営しています。主な特徴は下記です

  1. 毎月掛け金(1,000円〜70,000円 状況に応じて変更可能)を積み立てる
    →積立分は全額控除
  2. 積み立てた資金は中小機構が運用
    →加入者が金融商品を選ぶ必要はない
    ※加入年齢制限なし
  3. 65歳以降や廃業時(個人事業主・経営者をやめた時)に積み立てた資金を受け取れる
    →受取時に税控除あり

掛け金を拠出してその分が控除となり、受取時にかかる税金も控除を受けることができる(=税金を支払う時期を先延ばしし支払う額も減らせる)という制度はiDeCo(個人型確定拠出年金)と似ています

ただiDeCoとはいくつか異なる点もありますので、表にしました。

  iDeCo 小規模企業共済
積立金 全額控除 全額控除
月額 1.2万円〜6.8万円
※職種により異なる
勤務医は2.3万円 フリーランス・大学院生は6.8万円
1000円〜7万円
運用 金融商品を自分で選択 中小機構が運用
利率 商品により異なる 予定利率1.0%
受け取り時期 60歳〜 65歳〜 or 廃業時など
途中解約 原則不可 可能 ※元本割れのリスクあり
受け取り 一括 or 分割 一括 or 分割

iDeCoと比べると、受け取り時期の融通が効きやすい特徴があります。

詳細は後述しますが、廃業届をだせば元本保証で比較的自由に積立金の受け取りが可能です。

なおiDeCoについては下記の記事で書いていますので、参考にしてください

iDeCoで資産形成を目指す

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制度の加入資格

加入資格は下記の通りです

  • 小規模の個人事業主
  • 小規模の会社役員・協同組合役員・農事組合法人役員
  • 士業法人(弁護士法人・税理士法人等)の役員 ※医療法人は不可
  • 小規模個人事業主の共同経営者

このなかで、圧倒的に狙いやすいのが個人事業主の資格です。

医療関係の話題では医療法人は加入資格がないことに注意が必要です。つまり開業医では個人事業主として加入可能ですが、収益が上がって法人成りした場合加入資格を失ってしまいます。

医師がどのように加入するか?

小規模企業共済は給与所得があると加入できないとされるため、通常の勤務医の場合は法人を設立して加入することが現実的な方法です。

法人設立+確定申告の手間・法人住民税(年間7万円)を考えて、メリットが上回れば加入を検討しても良いと思います。

一方大学院生やフリーランス医師のように常勤先がない場合、普通のフリーランス・自営業の方のように開業さえすれば加入できます。(厳密に言うと社会保険がないことが条件とされます)

開業するための手続きは開業届を提出すればOKです。開業届提出の際のことは下記の記事でも書いています。

【青色申告特別控除】開業届・青色申告承認申請書の提出

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開業にあたって審査はないため、届けを出せば開業完了となります。小規模企業共済の手続きに控えが必要なため、なくさないようにしましょう。

制度の終了条件

小規模企業共済の制度から離脱するには、いくつかのパターンがあります。

  • 共済金A:個人事業廃業の場合, 契約者死亡の場合
  • 共済金B:老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛け金を払っている場合)
  • 準共済金:個人事業→法人成りして加入資格がなくなった場合
  • 解約手当金:任意解約の場合

下記の通り、パターンに応じて払い戻し額が異なります。

  元本保証の支払い条件(支払期間) 予定利率 1.0%基準(支払期間)
共済金A/B 6ヶ月以上 36ヶ月以上
準共済金 12ヶ月以上 223ヶ月(18年7ヶ月)以上
解約手当金 20年以上 -

細かい違いはおいておくとして、とにかく任意解約(解約手当金)は避けることが一番大切です!!。また準共済金もできれば避けたいですね

なお廃業届を出せば廃業となり共済金Aの条件を満たせるので、資金繰りに困った場合でもこの手段を取るほうが良いでしょう

メリット

  • 掛金(年間84万円上限)拠出時は全額控除となる
  • 一定期間以上預ければ、予定利率1%で返戻
  • 受取時に税金がかかるが、控除(退職所得控除 or 公的年金等控除)を利用可
  • その他制度(例:iDeCo)と比べて解約がしやすい、運用が不要

年間84万円という上限は、iDeCoなどその他の制度と比較しても高めです。

予定利率1%で運用益は通常の金融商品と比較するとあまり期待できませんが、運用が不要で元本保証は得やすい・いざというとき解約しやすいため安心感があります。

デメリット

  • 資金拘束
  • キャッシュフローの悪化
  • 制度から離脱する際の条件によっては、元本割れすることがある

ゆるいとはいえ資金拘束があること、掛金を拠出する時点ではキャッシュフローが悪化することがデメリットです。

逆の言い方をすると、キャッシュフローに余裕のある方はこの欠点が打ち消せることになります。

また元本割れのリスクもありえますが、先述の通り制度概要を把握することでほぼ避けることができます

具体的にどのくらい得になるのか?

掛け金を払うとき

掛金控除の額は所得税率によって変化します。

課税所得 税率(所得税+住民税)
〜195万円 5% +10%
195万円〜330万円 10%+10%
330万円〜695万円 20%+10%
695万円〜900万円 23%+10%
900万円〜1800万円 33%+10%
1800万円〜4000万円 40%+10%

例えば所得税率900万円〜1800万円で月額84万円の掛金の場合、84万円x(0.33+0.1)≒36.7万円だけ税負担が減少することになります。
※復興所得税率があるので厳密にはもう少し多くなります

課税所得金額が多いほど節税メリットが大きくなるので、医師など給与所得が高くなりがちな人には有利な制度です。

掛け金を受け取る時

掛け金の受け取り方は一括で受け取る方法と、分割で受け取る方法、そして両者を併用する方法があります。

  • 一括で受け取る方法では退職金として扱われます
    →退職所得控除が利用可能
  • 分割受け取りの場合は雑所得として扱われます(普通の年金と同じ扱い)
    →公的年金等控除が利用可能

その他の退職金(ex 会社/病院の退職金・iDeCo)にも依りますが、基本的には一括で受け取って退職所得控除を利用するのが一番受け取れる額は増えます。

退職所得
(退職金-退職所得控除※) × 1/2

※退職所得控除は下記で決定

  1. 20年以下の場合、40万円×加入年数
  2. 20年以上の場合、800万円+70万円×(加入年数-20年)

この計算式で出る退職所得に、税金がかかります。分離課税のため、退職所得のみで税金は計算されます。

実例で計算してみる

上の式だけではややこしいので、実例を提示します。

具体例として30歳〜60歳まで、年間84万円を30年間払った場合を仮定します。

この場合、退職所得控除は800+70x(30-20)=1500万円となります。

拠出金は2520万円(84万円x30年)で、共済金A/B受け取りの場合利率が加わり受取額は3000万円程度となります。

3000-1500=1500万円、さらに×1/2を計算して750万円に税金がかかります。

課税所得 税率 控除額
〜195万円 5% 0円
195万円〜330万円 10% 97,500円
330万円〜695万円 20% 427,500円
695万円〜900万円 23% 636,300円

税率は20%のため、750万円x0.23(税率)-63.6万円(控除額)= 108.9万円の税金を支払うことになります。

つまり2520万円を拠出し3000万円を受け取って、支払う税金は108.9万円(!)とわずか3%程度の税金しかかかりません(住民税は省略しています)

小規模企業共済を使わず税金を通常通り支払う場合、所得税として33〜40%程度の税金を支払うため、圧倒的に得ということになります。

小規模企業共済 加入の手続き

  1. 中小機構から資料を取り寄せる(1週間弱で到着)
  2. 書類に必要事項を記入
  3. 書類を窓口に提出
  4. 中小機構から加入証明書が届く(申し込みから40日後)

1.資料請求

資料請求は下記のURLから行うことができます。申し込みから1週間弱で資料が届きます。

資料請求|小規模企業共済(中小機構)

2.書類の記載

書かなくてはならない書類は契約申込書預金口座振替申出書の2枚です。

契約申込書

契約申込書では申込時に現金納付を行うかどうかが選択できます。

基本的には全額口座引落で問題ありませんが、初回の口座振替は申込みから2ヶ月後です。
年をまたぐと控除が利用できなくなるため、年末が近い(10月〜)場合は申込時に現金支払の方が安心です。

また支払い方法は月払い・半年払い・年払いから選べますが、基本は年払いとしたほうが良いでしょう。
(月払い・半年払いでは機会損失が発生しやすいため)

預金口座振替申出書

こちらでは掛け金を引き落とす口座機関+銀行印を記載します。ネットバンクは対応していないことに注意が必要です。

具体的な対応金融機関は下記に記載の銀行となります。

加入窓口|小規模企業共済(中小機構)

自分は三菱UFJ銀行にしました。

3.書類提出

提出先も上記リンク先に記載されており、商工会議所や銀行があります。

自分は近くの三菱UFJ銀行の支店で、書類を提出しました。提出時に本人控えが受け取れます。

(写真追記します)

あとは中小機構からの返事が届くのを気長に待ちます。書類が届いたらまた追記します

まとめ

  • 小規模企業共済は毎月積み立てを行い、掛け金が控除となります
  • 積み立てたお金は廃業時などに受け取ることが可能
    この際税金がかかりますが退職所得控除を利用できることから税負担はかなり軽くなります
  • キャッシュフローに余裕のある方(所得が高い方)にとって、優位点の多い制度です
  • 開業医やフリーランスの医師・大学院生は開業届を提出すれば加入することが可能です。
    勤務医で社会保険がある場合は、法人を設立して制度加入することが無難です

制度を有効活用して、節税を行いましょう。

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